Renkei日記 - 八十島法律事務所

2013-05-01 Wed

早川義夫「日常で歌うことが何よりステキ」(アイノア) 2010年9月10日刊


 2004年5月から2010年5月までの公式サイト上での日記に加筆訂正したものです。
 2007年9月27日午前3時に、早川の音楽上のパートナーとも言えるヴァイオリニストのHОNZIが亡くなります。早川にとって、彼女がどんな存在だったかは、こんな文章で分かります。
 「HОNZIの音は、テクニックを披露するような音楽とは違う。やさしい音なのに初めて聴く音だった。意外な音なのに奇をてらうわけではない。かすかな音もよく聴こえ、激しい音もうるさくない。常に歌を生かし、自分を主張するというより、降りてくる音を受け止め、奏でているだけのようだった。悲しみと優しさに包まれている、たましいそのものだった。『HОNZIの音ってシンプルでいいね』と言うと、『シンプルが一番難しいもの』と言った。見えないもの、聴こえないものが音楽なんだということを僕はHОNZIから学んだ。」
 早川やHОNZIの作品はネットで購入することができます。彼の言わんとしていることがなんとなく分かる気がします。

2013-05-01 Wed 18:17 | 新刊本

2013-04-21 Sun

田村隆一「若い荒地」 (講談社文芸文庫) 2007年2月10日刊


 この本は、間違いなく、日本の戦後詩をリードする役割を担った同人誌「荒地」のメンバーであった鮎川信夫、中桐雅夫、三好豊一郎、北村太郎、そして戦後をむかえられなかった牧野虚太郎、森川義信らの戦前から戦中にかけての活動を、田村隆一が、当時出していた「LUNA」、「LEBAL」、「詩集」といった雑誌を綿密に辿りながらまとめあげたものです。
 最初は伊達得夫の「ユリイカ」に連載し、その後「現代詩手帖」に引き継がれました。この連載は田村が37歳のときに始められ、それから44歳まで7年かけて完成しています。

2013-04-21 Sun 17:16 | 古本

2013-04-20 Sat

アンナカヴァン「アサイラム・ピース」(国書刊行会)2013年1月20日刊


 作者は、1901年4月10日フランスのカンヌ生まれということですので、梶井基次郎や小栗虫太郎と同年で、一つ下ということになると、久生十蘭、横溝正史や上林暁などがいます。
 実生活は、自殺未遂を繰り返すなど、相当過酷であったようですが、小説家としては、必ずしもマイナスではなかったと思われます。
 この作品集は、14の短編からなっていますが、晩年の芥川の作品のようです。どの作品も死と狂気と幻想に満ちており、とても面白く読めました。
 この人のほかの作品は、サンリオSF文庫などに入っているようですが、高いですねえ。

2013-04-20 Sat 17:08 | 新刊本

2013-04-19 Fri

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」(文藝春秋)2013年4月15日刊


まあ、その、いつものですね。なぞは解決されないし、結末も曖昧。
 でもまあ、さっくり読ませてしまう。実によく売れています。
 でも、ノーベル賞をもらうには、もう少し作りこんでもよいのではという気がしますが、余計なお世話ですね。
 決してけなしているわけではありません。尊敬しています。

2013-04-19 Fri 22:48 | 新刊本

2013-04-18 Thu

河原晉也遺稿「幽霊船長」 (文藝春秋) 1987年11月15日刊


 著者は1987年8月に44歳で急死されています。22歳のときに、鮎川信夫の知遇を得て、1986年10月に鮎川が亡くなるまで師事していた人だったようです。
 この本は、遺稿集なのですが、タイトルの幽霊船長とは、鮎川のことです。なぜこのような名前をつけたのかというと、著者は、鮎川の死後初めて家を訪れます。生前の鮎川は、その私生活については極端な秘密主義者で、親しい人にも住所はおろか、電話番号すら教えていなかったようです。その鮎川の家を訪れた著者は、腰を抜かすほど驚くことになります。なぜそうなったかは、実際に読まれたほうがよいでしょう。鮎川について、一定のイメージを持っている人ほど楽しめる内容となっています。
 このほかにも、エッセイや小説も収められていますが、どれも実にいいです。向井敏ももし生きていれば、「青べか物語」と並ぶ好著が生まれたかもしれないと書いています。
 実に残念です。

2013-04-18 Thu 22:39 | 古本

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