2019.08.05
相続に関する法律が改正されました⑤
配偶者居住権が認められますと、配偶者の具体的な相続財産取得分の中に、この配偶者居権の評価額が含まれるということになります。
最初に掲げた例によりますと、相続財産は、不動産が1500万円、その他現金が500万円の2000万円で、相続人が奥さんと子がふたりの3人でした。
配偶者居住権が認められず、かつ奥さんが不動産を取得しようとすると、奥さんは相続財産の500万円とは別に現金500万円を用意しなければなりませんでした。
これに対し、配偶者居住権が認められ、その評価額が500万円としますと、相続財産は1000万円ということになり、奥さんは相続財産の中の現金500万円を2人に子に渡せばよいということになります。
なお、特別受益という難しい問題が生じることもありますが、これは別の機会にお話しします。
このように、配偶者居住権が認められますと、そのまま居住を希望されている場合には、遺産分割の負担が相当軽減される可能性があります。
(八十島 保)
2019.07.23
相続に関する法律が改正されました④
配偶者居住権が認められるための二つ目の事情についてお話しします。
配偶者居住権が認められるためには、その建物について、配偶者に配偶者居住権を与えるという内容の遺産分割か遺贈か死因贈与がされていることが必要です。
遺産分割というのは、相続人同士で話し合いをして、遺産を分けることですが、家庭裁判所で調停(話し合いのことです)をしても結論が出ない場合には、審判といって裁判官が決めることになります。
審判の手続きに移った場合、新しい民法は、審判では、共同相続人の間で、配偶者に配偶者居住権を認めることについては合意している場合か、合意ができていない場合は、配偶者の生活を維持するために特に必要があると認めるときに限り、配偶者居住権を取得させるという審判が出せるとされています。
ですので例えば、亡くなった方が再婚していて共同相続人が前妻の子供達と後妻さんという場合は、容易に配偶者居住権が認められないということがあり得ます。
(八十島 保)
2019.07.16
相続に関する法律が改正されました③
配偶者居住権が認められるためには、夫が所有していた建物に奥さんが住んでいたことに加え、奥さんが夫が亡くなった時点で、無償つまりただでその建物に住んでいたことも必要です。
もし、奥さんが夫にお金を払っていた場合には、夫婦の間に賃貸借契約など何らかの契約関係があったことになりますから、夫が亡くなっても、その契約関係は無くならず、相続人に引き継がれることになりますので、配偶者居住権を認める必要はないということになります。
ですので、本件の場合、協議の結果、夫所有の戸建て住宅について、当面相続人3人の共有とし、持ち分は、法定相続分によると決めたとしますと、奥さんは、夫が亡くなるまで夫に払っていた賃料の半分を2人の子供達に払って住み続けるということになるわけです。
(八十島 保)
2019.07.11
相続に関する法律が改正されました②
配偶者居住権についての続きです。
これが認められますと、夫を亡くした奥さんは、無償でそれまで住んでいた建物を使用することができることになります。
この配偶者居住権が認められるには、次の二つの事情が認められる必要があります。
一つは、夫が亡くなった時点、つまり相続が始まった時点で、夫が所有している建物に奥さんが住んでいたことが必要です。
夫が、自分の親や兄弟と共有していた場合には、この配偶者居住権は認められないとされていますが、奥さんと共有していた場合は、認められます。
奥さんが住んでいたことが必要なわけですが、一時的に入院していた場合はどうでしょうか。
その場合でも、退院後は家に戻ることが予定されている場合には、認められると考えられています。
(八十島 保)
2019.07.08
相続に関する法律が改正されました①
平成30年7月に、民法の相続に関する法律が改正され、うち一部については、既に施行されています。
今後は、その内容について少しずつ紹介していく予定です。
今回は、配偶者居住権が新たに認められたことについて紹介します。
具体例を使います。ご夫婦でお子さんが2人いて、既にお子さんは独立しており、ご主人が亡くなられたという場合で、相続財産は、ご夫婦が生活されていた戸建て住宅と現金が500万円だったとします。戸建て住宅の評価額は土地と建物を合計して1500万円だとします。
これを法定相続分に従って遺産分割をすると、奥さんは相続財産の2分の1を取得し、2人のお子さんはそれぞれ4分の1ずつ取得することになります。
奥さんがこれまで通り、ご主人と暮らしたお家に住み続けたいと考えますと、奥さんはご主人が残した現金500万円の他にさらに500万円を用意して、2人のお子さんに渡さなければならないことになります。
勿論遺産分割は、法定相続分によらなくても3人の話し合いで決めることができますので、2人のお子さんが家も現金もいらないと言う場合も当然ありうるわけですが、ここではあくまで2人のお子さんは法定相続分に従った遺産分割を求めていることを前提とします。
奥さんが自力で500万円を用意できれば良いのですが、用意できなかった場合、どうなるでしょうか。
これまでですと、奥さんは、住み慣れた家を売却して現金を作るか、家を2人のお子さんの名義に変えて、賃借して住み続ける等が考えられますが、改正前の民法では従前通り家に住み続けることは、事実上困難でした。
この続きは次回に。
(八十島 保)
2019.07.04
自動車の購入の際に安易に名義を貸すと大変なことに
自動車損害賠償保障法という法律があります。この法律の第3条に、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」という規定があり、交通事故の加害者に対して損害賠償を請求するときは、この規定を使うことになります。
ところで、他人に頼まれて、自分の名前で車を購入し、車自体はその他人が使用していて事故を起こした場合、自分の名前を貸した者は、自己のために自動車を運行の用に供したものとして事故の責任を負うのかが問題となります。
これに関しては、沢山の裁判例がありますが、平成30年12月17日に最高裁の判決が出ています。
これは、兄が生活保護を受けているため、自分の名義で車を持つことができなかったため、弟に頼んで弟名義で車を購入し使用していたところ、追突事故を起こしたというものでした。
最高裁は、弟は兄による本件自動車の運行を事実上支配、管理することができ、社会通念上その運行が社会に害悪をもたらさないよう監視、監督すべき立場にあったとして、弟の責任を認めています。
(八十島 保)
2019.07.01
財産開示手続の改正について
2019年5月10日に、民事執行法の一部を改正する法律案が、参議院本会議で可決成立し、同月17日に公布されましたので、1年以内に施行させることになります。
この法律案の中で、特に重要と思われるのが、財産開示手続の改正です。裁判に勝っても債務者(被告)が任意に支払ってこないときは、強制執行をする必要があります。
しかし、これをするには債務者(被告)がどこにどのような財産を有しているのかについての情報が必要となります。これがなければ、強制執行をして債権を回収することができません。
そこで、こうした情報を得るための手段として、財産開示手続という制度が作られたのですが、残念ながら、これまではあまり利用されていませんでした。
その理由はいくつかあるのですが、現行の制度は、債務者(被告)が、この手続に非協力的であったり、不誠実な態度であったとしても、きちんとした制裁を課すことができませんでした。ですので、残念ながら、さほど実効性のある制度ではありませんでした。
今回の改正では、債務者に対する罰則を強化するとともに、新たに第三者から債務者(被告)の財産に関する情報を取得できる制度を新たに設けたのです。
今回の改正について、より詳しい説明を希望される方は、当事務所までご連絡下さい。
(八十島 保)
2017.03.13
22万5000組の離婚
芸能人などの離婚に関する記事を目にすることがよくあります。厚労省の統計によると、平成27年の婚姻件数63万5000件に対し、離婚件数は22万5000件ですので、割合でみると、婚姻が3件あれば離婚は1件あるということになります。
2016.12.20
退職後の転職先を制限できるか
従業員に対して、退職後3年間は、同業他社への転職を禁止した雇用契約は有効でしょうか。会社の従業員は、職業選択の自由がありますから、本来退職後は、自由に転職先を決めることができます。