Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-10-30 Tue

近藤聡乃 「不思議というには地味な話」 (ナナロク社) 2012・6・6刊


著者は漫画家、アニメーション作家で、現在はニューヨーク在住とのことです。最初は、海外での製作について書くように勧められたとのことですが、書かれたものの多くは、子どものころの思い出です。
 「カエルについて納得していないこと」では、大きな石をカエルに見間違えたことについて、「宮沢賢治のインドラの網に、『ほんのまぐれあたりでもあんまり度々になるととうとうそれが本当になる』という一文があります。『あれは見間違いではなく、カエルが石になったのだ』と半分はそう思っています。」とか、「応用の仕方を知りたい」では、「誰かが私に『絵の基準を他に応用するコツ』を教えてくれたら、もしかしたらどうにかなるのかもしれません。ただ『人に大人しくものを教わる素直さ』と『人がものを教えてあげたくなるような人柄』の両方に、自信がありません。」というように、とぼけた味わいのある文章が楽しめます。
 

2012-10-30 Tue 17:30 | 新刊本

2012-10-22 Mon

丸山健二「新・作庭記」 (文藝春秋) 2009年5月15日刊


 帯に、日本最古の庭造り指南書「作庭記」の現代版にして、究極の庭造り芸術論とあります。しかし、内容は、庭造りのためのマニュアルものでは全くなく、著者の強烈な人生観、芸術観が綴られたものとなっています。
 いわく「伝統的なタイプの文士の言葉の一体どこに耳を傾ける価値があるのだろう。異様なかれらの奇形の尺度から創出される作品は、どれも薄っぺらで、底が浅く、衝撃的な感動をもたらすことは絶対にあり得ない。」、「自国の文学に対する国民の評価は明らかに過大だった。どうにか小説の体を成している作品であっても、文学と呼べる域にまでは達していなかった。」、「知性を持たないことこそが真の知性ではないかと思ってしまうときもある。」、「本物は、その世界を突き抜ける。」、「植物から学ぶべき最大の哲学は、何よりもまず時間の恐ろしさであろう。」、「日本人の欠点は何事も徹底しないことだ。ふさわしくない人物を担ぎ上げてその辻褄合わせでは通用しない時代が訪れた。」
 このほかにも印象的な言葉がたくさん出てきます。

2012-10-22 Mon 16:56 | 古本

2012-10-20 Sat

森榮枝 「麦わら帽子」 (編集工房ノア) 2012年7月7日刊


 作者のことは全く知りませんでしたが、ノアが出しているので購入しました。作者は現在80歳と高齢の方ですが、80年代から90年代にかけて、同人誌に発表していた六つの短編からなる作品集です。
 「済南まで」は、戦争中の大陸での日本人のおごりと、敗戦後の惨めな暮らしを対比したもの。「朴念仁」は、主人公が、小学校のときから一緒だった兄弟の兄と結婚するのですが、大人になって、この弟は、借金まみれで、結婚しているのに愛人を作り、周りに迷惑ばかりかけるどうしようもない人間になってしまいます。しかし、この弟は、女のように気のつく優しい子で、それは大人になっても変わりません。まるで兄とは正反対なのですが、主人公に言わせると、兄は、朴念仁なのでした。「六さんは、まわりの人から見ると嫌なおじんだ」で始まる「六さん」は、老人の孤独を描いたもの。「潮の泡」は、中年男性の女性の部下に対する淡い思いを綴ったもの。「とどまる」は、中小企業の社員の悩みを綴ったもの。「麦わら帽子」は、大学生の子どもがいる家庭の主婦が、手術を受けてから退院するまでの心のうちを綴ったものです。
 どの作品も、なかなか捨てがたい味わいがあります。
 

2012-10-20 Sat 12:00 | 新刊本

2012-10-11 Thu

吉田一穂 「羅甸薔薇」 (山雅房) 昭和25年6月1日刊


 限定100部で、一穂が52歳のときに出版しています。これを出した目的について、「既刊四詩集の誤りを校し、法を立て、ひとまず定本を編纂することゝした。」と書いています。
 軸で「藝術とは構成であり、一にかゝって比率にその秘密がある。だが詩に道はなく、救ひはない。イデエという不死病があるだけである!」と書いています。
 おそらく真の芸術家だけが、この言葉の意味を理解することができるのでしょう。

2012-10-11 Thu 17:42 | 古本

2012-10-11 Thu

吉田一穂 「未來者」 (青磁社) 昭和23年3月31日刊


一穂が50歳のときに出したもので、すべて旧作で編まれています。戦争中は、主に童話を書いて糊口を凌いでいたようです。
 序には、「これは辰伐罎譴箸燐話である。つねに意識の暗室で混沌に點火し、虚無の潰蝕と偶然の骰子から、表現體へ分離する自我確立の、自由な精辰燭襪戮ところに、わが生涯の詩の志があり、而して我れまだ詩に關する限り、自らのシステムに坐して無限の寂實と面してゐる。」と書いています。
 この力強さは、おそらく戦争が終わったことへの喜びなんでしょうか。

2012-10-11 Thu 17:37 | 古本

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