Renkei日記 - 八十島法律事務所

2011-05-31 Tue

中原昌也 死んでも何も残さない


 読んでもいないし、興味もない、三島由紀夫の名を冠した賞を受賞している作家です。その彼から聞き取りした言葉をまとめで1冊にしたもので、内容は一応自伝ということになっています。
 彼の書く小説や、日記、映画評からは良く分からなかったのですが、彼こそは、あの辻潤の再来であると思いました。
 彼は、この本の中で、「書きたくて書いているんじぁないことしか書きたくないことが、どうして分かってもらえないのか。」、「本当に混沌としている感じは、もうどこにもないのだろう。どこかで棲み分けができていて、その枠を動かすことはもうできない。」、「なぜみんな共感し合わなければならないのか。共感など全部嘘っぱちだということを、率先して理解しなければならないのに。」、「歴史とか伝統と呼ばれるものは全部終わったという認識が必要だ。今後記憶すべき歴史などもうない。戦争すら、もはや歴史的な出来事ではない。」1つ1つの出来事が安くなる。」などと言っています。
 こうした考え方は、辻潤の思想に非常に近いと思いました。どう近いかについては、次回に。

2011-05-31 Tue 17:14 | 新刊本

2011-05-30 Mon

五味康祐 「いい音 いい音楽」


  先日住宅金融支援機構の元営業推進室長が汚職で逮捕されたというニュースがありました。動機は、女でもギャンブルでもなく、高額のオーディオ機器購入で約1000万円の借金を抱えていたとのことでした。
 この本は、五味康祐が、最晩年に新聞に連載していたエッセイを軸に編まれたもので、音楽やオーディオに対する熱い思いについて書かれています。ごみはこの種のエッセイをたくさん出していて、昔はよく読んでおりました。その仲に、「芥川賞の時計」というエッセイがあります。
 彼が芥川賞を受賞した昭和28年当時、彼は校正の仕事をしていて、月収が1万円、都営住宅の家賃が、2700円、そんな生活の中から、3000円のLPレコードを買っていました。芥川賞の賞金は5万円で、副賞が懐中時計だったそうです。五味は、知人から輸入オーディオを3万円で譲ってもらう約束をしていて、それに宛てるため、その懐中時計を質に入れようと考えていたところ、奥さんは、それを察したか、懐中時計を隠し、その代わりに3万円を渡してくれたそうです。話がここで終わっていれば、落語の人情話のようで、いい話で終わるのですが、五味は続けて、機械だけでは音楽は鳴らないと書き、結局レコードを買うために、懐中時計を質に入れるわけです。そこが、この人の業で、作家になる人は違いますね。最後に、「あの頃の方が、音楽を聴いていたという気がする。今は音質を聴きすぎる。どちらが果たして幸福なんだろう。」と述懐しています。件の元営業推進室長も、音質を聴きすぎていたのではないでしょうか。

2011-05-30 Mon 11:22 | 新刊本

2011-05-26 Thu

どうやって食べてきましたか


これは、小沢信男、津野海太郎、黒川創の鼎談で、正式な書名は、「小沢信男さん、あなたはどうやって食ってきましたか」です。この書名で手にとって見ることにしました。小沢信男の名前は知っていましたし、ちくま文庫の「犯罪百話」は持っていますが、いい読者とはいえませんでした。
苦労して成功した実業家の子として生まれ、父親から、「うちみたいに5人も子どもがいりゃ、一人くらいどうしようもないのが出てもしょうがない。」と目の前で言われ、大学を出て河出書房で校正のアルバイトをしていたときに、あの内田百里ら電話があり、「阿房列車」の“阿房”の字を「阿呆となさっているのはどういうわけですか。」てな電話をもらい、その直後に河出は倒産し、30歳になるまで、親のすねをかじり、結婚するときに親に家を買ってもらい、「幸いに女房が小食で子どもがいないでしょ、金がかからないんだよ、ほーんとに。」と嘯く。しかしその一方で、「実はこまごまと働いてきたんです。」とおっしゃる。
 これまでかかわってきた人たちについて、いろいろ語っていますが、特に印象的だったのは、「山田さん(山田稔のこと)っていうのはうまいねえ。多田道太郎さんが、小説になって腐っていく寸前の文章だといってくれた、と書いているね。多田さんのことを書いているその文章がまさにそれだな。非常にいい。」という発言。
 最近「本の立ち話」という本を出されたので、読んでみることにします。

2011-05-26 Thu 09:33 | 新刊本

2011-05-20 Fri

ブラックスワン


 先日ブラックスワンを見てきました。一応話題の映画ですからね。この作品については、沢木耕太郎氏が朝日新聞に、「観客をドラマの中に深く入り込ませるのは、白鳥の湖という物語の持つ構造の力と、ニナ役のナタリー・ポートマンの研ぎ澄まされた肉体の力であるように思われる。」と書いていますが、まさにそのとおりで、逆に言うと、それ以外には見るべき点がないように思いました。ストーリイ的には平板であり、ホラー映画的な演出についてもやや興ざめな気がします。ただナタリー・ポートマンについては、アカデミー主演女優賞をあげる価値はあると思いましたね。
 さてそれに付けても、亡くなった淀川長治氏であれば、この映画をどのように紹介したのかなと考えてしまいます。淀川さんといえば、日曜洋画劇場が有名ですが、ずいぶん昔、淀川さんは、映画についてのラジオ番組を持っておりまして、それをよく聴いておりました。ストーリイの紹介が巧みで、思わず話に引き込まれてしまい、どんな映画もすばらしい傑作のように思えたことを記憶しています。また、辛口の評論もあったように思います。いまこうした話芸を持っている方は、小沢昭一氏くらいしか思い出せませんが、とても残念ですね。どんな映画でも、淀川さんが褒めていたらまあいいかという気持ちになったような気がします。

2011-05-20 Fri 11:40 | 映画

2011-05-12 Thu

いまそかりし昔


 最近一部で話題になっている本です。著者は築添正生という方で金属工芸家を本職としています。この方のおばあさんが、平塚らいてうで、昭和46年5月にらいてうは永眠するのですが、晩年のらいてうとの交流についても書かれています。この本は、築添さんが亡くなったあと、故人を偲んで、長女の方を含め4人で、故人が生前、地方紙やリトルマガジンに書かれていたものを集めて一冊の本にしています。らいてうのほか、らいてうの夫の奥村博史のことや、谷中安規、内田百痢稲垣足穂、尾崎一雄、吉田健一、埴谷雄高、田村隆一、小島凡平、武林夢想庵、辻潤、それから殿山泰司まで出てきます。
 この本のタイトルですが、昔懐かしいあり、おり、はべり、のいまそかりだと思うのですが、日本語として正しいのか分かりませんが、おそらくそこに確かに存在した昔という意味だと受け取ればよいのかなと思います。
 それにしても、実にいやみのないいい文章で、羨ましく思いました。
 

2011-05-12 Thu 17:41 | 新刊本

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