Renkei日記 - 八十島法律事務所

2014-07-17 Thu

伊藤茂次詩集 「ないしょ」 (亀鳴屋)  平成21年3月12日刊


 編者の外村彰は、「茂次さんの人生詩には、いわゆる破滅型の作家が書くような私小説の読後感にも似たわびしい余韻がある。」と書いています。そこが魅力ですね。
          「ないしょ」から
   女房には僕といっしょになる前に男がいたのであるが
   僕といっしょになってから
   その男をないしょにした
   僕にないしょで
   ないしょの男とときどき逢っていた
   ないしょの手紙なども来てないしょの所へもいっていた
   僕はそのないしょにいらいらしたり 
   女房をなぐったりした
   女房は病気で入院したら
   医者は女房にないしょでガンだといった
   僕はないしょで泣き
   ないしょで覚悟を決めて
   うろうろした

2014-07-17 Thu 17:59 | 新刊本

2014-06-19 Thu

金時鐘 「猪飼野詩集」 (岩波現代文庫) 2013年12月17日刊


 猪飼野とは、大阪市の一画にあり、1973年2月1日を期して地名としては消失したのですが、在日朝鮮人の方が多く住み、彼らの代名詞のような町でした。
 著者は、在日民族団体の活動家でした。朝鮮戦争時猪飼野の工場では、殺傷兵器の部品を作っていました。それは、生活のために、同族を殺す側に同族が加わることを意味していました。彼は、その仕事をやめさせる活動をしていたのですが、それは、なけなしの食い扶持を潰す側にいたということになります。
 著者は、「理念と現実との間で、私の青春は細りにほそった」と書いています。
       「見えない町」から
      なくても  ある町。
      そのままのままで
      なくなっている町
      電車はなるたけ 遠くを走り
      火葬場だけは  すぐそこに
      しつらえてある町。
      みんなが知っていて
      地図になく
      地図にないから 
      日本でなく
      日本でないから 
      消えててもよく 
      どうでもいいから
      気ままなものよ

2014-06-19 Thu 19:15 | 新刊本

2014-06-19 Thu

清水昶「暗視の中を疾走する朝」(築地文庫) 2014年5月30日刊


 オリジナルは、1965年に限定30部で発行されています。この復刻版は、原本の版下原稿そのものを使って印刷されているので、限りなく原本そのものに近い感触に仕上がっているとのことです。
 この詩集は、清水の最初期のころのもので、もし清水が生きていて、これを見たら、どう思うでしょうか。
       「ぼくのノオト」より
     だから、ぼくはセンチメンタルな革命家になって
     感性を破裂させ 燃え滅びたいのだ
 ああ、恥ずかしいと言うような気がしますね。でもここから詩人は出発したのでした。 

2014-06-19 Thu 19:00 | 新刊本

2014-04-11 Fri

高橋輝次 「書斎の宇宙」 (ちくま文庫) 2013年12月10日刊


編者は、あとがきで、「最初にどの文章に出会ったのがきっかけとなったのか、もはや憶い出せないが、これは蒐めると面白いぞ、と思いつき、」「それ以来、趣味の古本漁りのかたわら、その種の文章を見つけては入手し、長い間かかって、これらの珠玉の文章が徐々にたまっていった。」と書いています。
 内田百里痢峇」というエッセイでは、「私は若い時非常に漱石先生を崇拝したので、先生の真似をした。」とあり、漱石の書斎にあった、「箆棒に大きな机」とそっくりな机を作らせたと書いています。
 また、天野忠は、定年後初めて二畳半の書斎を持ったときの気持ちについて、「毎日この時の来るのを願ってばかりいたのだったのに、」「手も足の出ないほど何もすることがないらしいのである。」「ときどきその状態の阿呆らしさに笑えてくるときがある。」「虚しさの底のほうでニッと笑っているような腹の冷たい笑いである。これがひょっとしたら幸福という奴の別の顔であろうかと思う。」
と書いています。これは、彼の詩の世界そのものですね。

2014-04-11 Fri 20:35 | 新刊本

2014-04-10 Thu

高原英理編 「リテラリーゴシック・イン・ジャパン」(ちくま文庫)2014年1月10日刊


編者は、リテラリーゴシックの最大の特性は「不穏」であるといっています。この本は、その観点から、黎明期から現在に至るまで、わが国における文学的ゴシック作品を集めた画期的な本といえます。
 そこには、吉岡実の詩や、葛原妙子の短歌、高柳重信の俳句も入ってきます。意外なところでは、宮沢賢治の作品も、「無垢とは常に極悪な何かの傍らにあってこそ成立する」という考えから入れていますし、古井由吉の作品については、「そのレトリックの迷宮的な魔術性」から入れています。

2014-04-10 Thu 20:17 | 新刊本

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