Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-08-31 Fri

坪内祐三編「禁酒宣言上林暁酒場小説集」(ちくま文庫)1999年9月22日刊


 これも上林フリークによるアンソロジーで、タイトルから分かるように、酒にまつわる作品から選んでいます。
 選者は、大学院を出た20代の終わりころ、小林信彦が、かつて筑摩書房の全集を読破したことがあると何かで書いていたのを読み、小林氏ほどの読書巧者が全集を読破してしまうとは、かなり面白いのに違いないと思い、チャレンジしてみてはまったと書いています。
 この本は、選者の解説とともに、日本文学者のスタンレー鈴木の評論が載っています。そこで彼は、「ジェイムズ・ジョイスが何百頁も費やして描こうとした神話なき現代の神話世界を、上林は、わずか数十頁で描き尽くしている。」と書いています。
 選者が書いているように、貧乏くさくても「ミニマルな世界こそが、日本人が、日本人に特有の、ある、深遠で永遠なるものに近づける道」なのかもしれません。

2012-08-31 Fri 18:29 | 古本

2012-08-31 Fri

山本善行撰「上林暁傑作随筆集故郷の本棚」(夏葉社)2012年7月30日刊


同じ選者による上林暁のアンソロジー第2弾で、今回は随筆から選んでいます。選者は、「上林は何冊も随筆集を出していますが、この本がこれら珠玉の随筆集の中にあっても色あせないで、長く読み継がれていくなら、選者としてこんなうれしいことはない。実際そのように夢見ながら、作品を選んでいったのだった。」と書いています。
 上林は、戦争前も、戦争中も、戦争後も、古本屋歩きは、私の最大の道楽だったと書いていますが、古本についての話しや、知人の作家の話など、どれもおもしろい内容となっています。
 選者が上林の文学にのめり込むきっかけとなったのは、「武蔵野」(現代教養文庫)を読んだことだったと書いています。いつだったかちらっと見てるんですが、そのときはなぜか買いませんでした。失敗でしたね。

2012-08-31 Fri 18:25 | 新刊本

2012-08-31 Fri

山本善行撰「上林暁傑作小説集星を撒いた街」(夏葉社)2011年6月25日刊


一人の小説家のアンソロジーですが、選者がどういう視点で作品を選んだのかが最大の見所でしょう。選者は、「身体の中には上林暁が入っているので、少し大げさに言うと、上林の作品なら何を読んでも、どの小説を読んでも楽しめてしまう。」と書いています。多くの作品の中から、7つを選び出すことは、苦しくもかつ楽しい作業であったことが想像されます。
 さて選んだ理由ですが、最初の「花の精」は、最も好きな小説のひとつとあります。上林には、病妻物と呼ばれている作品群がありますが、そこからは最小限に抑えたということで、二つの作品を取り上げています。井伏鱒二は、二度目に倒れてからのものが一段といいとどこかで書いていて、選者も全面的に賛同し、その時期のものから一篇選んでいますが、初期のころの若々しい抒情的な作品も捨てがたい魅力があるとして、昭和6年に書かれた、この本のタイトルにもなっている「星を撒いた街」を選んでいます。

2012-08-31 Fri 18:21 | 新刊本

2012-08-27 Mon

豊由美  「ガタスタ屋の矜持」 (本の雑誌社)2012年6月20日刊


 ガタスタとは、ガター&スタンプの略で、ヴァージニア・ウルフが書評家の仕事を腐して使った言葉で、以前取り上げた、この著者の「ニッポンの書評」にも書かれていました。
 ガターとは、本の内容を短く書き表すことで、スタンプとは、評価を下すということです。著者が書いているように、ガターには、読解力と技術が必要で、スタンプにはセンスと勇気が必要で、そのことを身をもって示したのが本書ということになります。
 この本では、多くの作品が紹介されており、その多くは高い評価を与えているのですが、中には、著者としては評価できないと考える作品もあり、そんな作品に対しては、「村上春樹は一人でいい。そっと野におけ春樹節、なんである。」、「エンタメ路線にありながら直木賞受賞作よりもレベルが低い代物じゃん。」、「で、大人げない私はそういう小説が売れに売れていることが不満で仕方ないのです。ごめんね意地悪ババアでさ。」などと書いています。
 著者は、誇りを持って、ガタスタ屋と名乗っています。

2012-08-27 Mon 18:13 | 新刊本

2012-08-27 Mon

武田泰淳 「目まいのする散歩」 (中公文庫) 昭和53年5月10日刊


 著者の生前最後の本です。奥さんである武田百合子氏の口述筆記により書かれたものです。印象深い記述をいくつか拾ってみます。
 「うすらバカ」、「うすらトンカチ」などという悪口は、悪口ではなくて、わけへだてなく、われわれ人類の上に与えられた神様の批評のように思われてくるのは、恍惚の人のよくない癖である。」
 三島さんの死は、ニヒリズムの結果ではなく、川端さんの死は、ニヒリズムの証明であったか、どうか。それをたしかめようとする気持ちは、私にはない。
 どこを散歩しても、どこのベンチに腰掛けても、病後の私は笑ったような、笑わないような顔つきをしている。女房は「笑ったような顔をしているけど、本当はそうじゃあなくて、ただ、そういう顔をしているのね。」と名言を吐いた。

2012-08-27 Mon 18:10 | 古本

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