Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-01-27 Fri

坪内祐三 「後ろ向きで前へ進む」  (晶文社)


 1979年当時21歳だった坪内氏は、時代が大きく変わり、新しい時代に突入しつつあることを体感していました。そのころから、歴史は止まって行こうとするように思えた一方で、時代がどんどん便利になっていき、経験の一回性が失われつつあり、この時代のことを語るのは手に負えない感じがしていて、その思いは、20年たっても変わっていないことから、この本は、未完成な本であり、「幻の1979年論」であるといっています。
 さてどういう切り口で述べているかというと、例えば、79年に亡くなった植草甚一氏と、同年に蓮實重彦氏が出した「表層批評宣言」を対比して、メッセージ性が求められた時代から、一種の「制度壊し」へと時代が変化したとし、その結果何が残ったかついては、非常に難しい微妙なものがあるとしています。
 また禿鍔饌犬塙焼淳を取り上げ、70年代の終わりから80年代の初めにかけて、仲間内の和をみだす危険分子に対する村八分―暗黙のチェック機能がジャーナリズムの中で働き始めたと分析しています。
 確かに、現在に続く閉塞感、例えば、お金があっても幸せに感じないといった気分は、70年代の終わりころから始まったような気がします。  

2012-01-27 Fri 19:55 | 古本

2012-01-26 Thu

重政隆文  「映画の本の本」   (松本工房)


 映画について書かれた本の書評集です。とても厚い本ですが、激辛の文章が面白く一気に読めました。
 さて次の文章は誰について書かれたものでしょうか。
 「タイトルからしてハッタリじみているが、中身もハッタリじみている。語り口が詐欺師に近い。中庸の徳というものを知らない。要するにわがままであり、我を通しているのだ。」
 「確かにこの人は映画に対して強い愛情を持っている。しかし致命的なことに、映画的教養が貧しいのではないか。」
 「同時代的に映画と伴奏していないと直感的に思った。」
 「映画を守り損ねている。裸の王様。」
 「見る気がしない映画は愚作だなんていうやつは相手にしなくていい。」
 知りたい人は、この本を捜して読んでください。

2012-01-26 Thu 18:58 | 古本

2012-01-26 Thu

青木正美   ある「詩人古本屋伝」


 著者は、古書店を経営していて、これまで古書や古本屋という商売に関する本を何冊も書いています。
 この本は、昭和62年にたまたま市場で仕入れたものの中に、日記があり(こんなものも出回るのです)、ドン・ザッキーという名の詩人を知り、それが、同業者ではないかと考え調査をし、彼を知っている人や本人さらにはその子どもにも会いに行くという話です。
 この本の解説を書いている内堀弘さんがいうように、ドン・ザッキーらが活躍した1920年代のダダイストやアヴァンギャルドたちの多くは、行方不明のままです。時代の先端へ駆け上がろうとした彼らの姿は次第に明らかになってきていますが、そこからどこへ帰っていったのか、その道筋を記録したものはなく、この本はそうした姿を初めて映し出したものです。
 この本と一緒に出している書影は、大正14年5月5日にドン社から発行されたドン・ザッキー詩集「白痴の夢」です。ドン・ザッキーの長男が経営する印刷会社が発行した復刻版で、造本・装幀ともに原型のとおりとのことです。

2012-01-26 Thu 18:50 | 新刊本

2012-01-23 Mon

柴田錬三郎  「柴錬ひとりごと」  (中公文庫)


 自虐を裏返しにした虚構は、大いに当たった。嘘をついて金が儲かる。いい商売である。深夜、空虚感におそわれるぐらいなんだ!
 滅ぶことを知らぬ者が、天下を取るから、その行動は、とどのつまり、すべてを破壊してしまうのである。
 ダンディズムとは、他人に似ることを厳しく警戒する独創性の追及によって、真価を発揮する。
 ロマンチシストは、絶対に家庭に縛られてはならぬ、ということが明瞭である。「家」に縛られた人間が、我々を瞠目せしめるような大きな仕事をしたためしは、ないのである。
 かって、文士という言葉がありました。柴錬は、文士という言葉が良く似合うと思います。その彼が、佐藤春夫の弟子であったとは知りませんでした。
 1917(大正6)年に生まれ、1978(昭和53)年に亡くなっています。

2012-01-23 Mon 18:46 | 古本

2012-01-23 Mon

早川義夫 「ラブ・ゼネレーション」  (文遊社)


 元本は、1972年に出版され、その後1992年に文庫化され、さらに未収録原稿を追加して出されたのがこの本です。1968年から1972年にかけて主に音楽雑誌に書かれたものがまとめられています。
 今回の復刊に際し、早川氏は、「読み返してみると、今、自分が思っていることと、ほとんど変わっていないことに気がつく。」と書いています。実感なのでしょう。
 また彼は、こうも書いています。「『友よ』という歌に代表されるように、みんなで合唱すること、みんなが同じ思想を持って行動を起こすことに、当時から僕は肌寒さを感じていた。全員が一人の女性を愛することがないように、全員が同じ思想を持つことは、嘘なのである。」
 早川氏は、ジャックス解散後、本屋さんを始め、近年は再び音楽活動をしていますが、音源が入手し辛いですね。困ったものです。

2012-01-23 Mon 18:28 | 新刊本

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