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2013-10-01 Tue
河野仁昭「詩のある日々〜京都」(京都新聞社) 1988年11月5日刊
著者は詩人でもありましたが、昨年2月20日に逝去されました。第1部は、京都新聞に連載していたもので、代表的な詩人の作品を取り上げ論評しています。例えば、「詩の題材には急所のようなものがあって、急所が見えてきたとき、ひょいと掬いあげる。」(天野忠)、「過去の詩人の在り方を徹底的に批判した筆頭は彼であった。」(黒田三郎)、「戦後社会に復帰したとき、犠牲の意味も、生きていく意義も見出しえなかった。」(鮎川信夫)、「十全な生が得られない社会は、十全な死もまた得られぬ社会なのである。」(田村隆一)といった記述が見られます。
第2部では、戦後の京都で詩活動をおこなった人のことを書いています。なかの、「黒瀬勝巳を悼む」というところで、「生前は一冊の詩集しか持たなかった。血のつながる者への愛惜と、生活者の苦渋を、一見軽いと見られるタッチで、しんみりと描いた。」と書いています。その彼の「背中」という詩が引用されています。
たしかに広い背中だが 娘よ
黒板じゃないのだ
おまえは チョークをもって おれの背中に
おぼえたての くろせの「く」 を書きたがるが
(略)
娘よ ひっかついてきたすべてのものをおろし
もう どんな「く」だって
背負いたくない
とおれは思っているのだ
2013-10-01 Tue 20:09 | 古本
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