2012-06-28 Thu
この詩集は、「今日の詩人双書」の1冊で、彼の4つの詩集と俳句から、飯島耕一が編集したもので、長い解説も書いています。安東について、飯島は、「暗黒に敏感であり、近代日本の持つ諸矛盾に圧迫を感じないではいられない詩人であった。しかし、彼は、人間の、本質的な明るさ、楽天主義的なほどの明るさを知らずにすましておくことはできない。」と述べています。
「ぼくの名まえは」から
すべてはもとのままであるのに
どこかが永久にくるってしまった
なにものにも似ない あなたよ
ぼくはあなたにはなしかける
(略)
世界よ 残忍な灰色の雨期よ
こんこんと眠る女
小鳥を秘めて(小鳥はとぶだろうか?・・・・・・)
小鳥がとびたつとき ふっとぶ世界
そのときのまぶしそうな太陽を逃すな!
2012-06-28 Thu 17:15 | 古本
2012-06-22 Fri
なんと私が持っているのは第2版です。この種の本、しかもユリイカの本としては、大変珍しいのではないかと思います。初版は前年の1955年に出ています。
さて、著者自身も詩人でありますが、詩人とは、言語脈をわきまえざるを得ない宿命におかれたときに、「説明的表現へのすべりこみ」を避けて、本質的なことば(イメージ)に到達するか、ということに悪戦苦闘して自分の生命を持続させることのなかにのみ、存在すると思うのであると定義し、こういうことを身を以って体験したと思われる、中原中也、立原道造、そして富永太郎の三人の詩人を取り上げています。そして、中原については、答えしか詩のなかで提出することのできなかった詩人であるとし、立原については、詩は究極のところで、一つの物語と考えており、探ることにその本来の詩人的素質を持っていたとし、永久に問うことしかしなかったと言います。そして、富永については、「強いられた自殺」を「自分の手による自殺」に切り替えることによって健康であろうとしたおそらくただ一つの許された例外であったと述べています。
2012-06-22 Fri 18:20 | 古本
2012-06-19 Tue
著者は、この本によれば、装幀家である菊地信義氏の事務所の丁稚となり、その後独立。「森茉莉全集」、「尾崎翠全集」など装丁多数とあります。
この本は、「ちくま」とか「銀花」などに掲載された文章をまとめたものです。
この人は、自宅に小型の活版印刷機を持っていて、少しずつ活字を購入し、月1枚ずつ葉書を刷って、友人・知人に送っていたとあります。このあたり普通じぁないですね。ですが、文章がとてもよくて、もっと読んでみたいと思いました。例えば、
「気持ちをかたち作る手掛かりは、けっこう具体的なところにあるものだ。人が心を寄せてきたもの、気持ちを積み上げてきたものが何のためらいもなく削られていって、ある日気がつくと、町は見知らぬ町になっている―。あんまりさびしいじぁないか。と思う。」
2012-06-19 Tue 21:00 | 新刊本
2012-06-19 Tue
きだんと読みます。かの荷風の名作もきだんと読むんですね。間違えてました。
文藝とありますが、文学者の話だけではなく、モダニズムとポストモダニズムの対立の問題や、ロストジェネレーションについての言及もあります。日本においては、消費のための消費が日常化してゆき、消費そのものにはあまり関心の持てない世代というのがいて、それは、かつての失われた世代よりさらに不幸であるとの記述があります。
文学については岡田睦と川崎彰彦を取り上げ、「共にいわゆる文壇とは無関係に、自由に作家活動を行っている、アナーキストである。どうやって生活が成り立っているのか分からない(だがそれがうらやましくも美しい)。」と書いています。
2012-06-19 Tue 21:00 | 新刊本
2012-06-13 Wed
当初この本の書名は、「革命的1958年生まれ宣言」にしようと考えていたらしいのですが、東京タワーの完成と同じ年に生まれたことにこだわり、この書名になったようです。
内容は50歳を超えたところで見えてくるものについての雑文集というところでしょうか。
次々と雑誌が廃刊となっている今日ですが、ネットで得られる情報は単体にすぎず、歴史を失ってしまうことに対する危機感から、逆に今こそ雑誌の時代が始まる、かつての本屋は、いまのように売れ行きだけを最優先するものではなく、一つの豊かな文化基地であり、単に買い物をするだけの場所ではなかった、平成という元号になじむことができない、平成に入ってからのスピードは特別だ、いまその巨大な樹は朽ち果てようとしているのに殆ど誰もそのことに危機意識を持っていない等、反体制的言辞に満ちています。ここが革命的という所以でしょうか。本人は、保守と称していますが。
2012-06-13 Wed 17:15 | 新刊本
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