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2013-01-18 Fri
天野忠「わが感傷的アンソロジイ」 (書肆山田) 1988年3月25日刊
著者は、この本について、20年も前に、ひどく粗末な体裁で、ごく小部数を内輪の読者のための限定本として、小さな世間へ送り出したと書いています。いわゆる「世に迎えられず」に逝ってしまった詩人たち(行方不明の人もいます)について書かれた本です。
大野新は、この本について、詩人の本質をあやまたずえぐる鋭さ、一瞥の間に、動く対象を截りとるデッサン力、センチメンタルな構えで、気どりやポーズを剥ぐ非情さにふるえたと書いています。
たとえばこんな文章があります。
「野殿啓介は、彼の持っている一番やさしいもので、自分を殺したのだと私は思う。」
「決して正体を見せてくれない『話そうと思っていたもの』そのものを、しみじみと肚の底を打割って語り合う時間というものを、われわれは生きている三十年四十年の長い家庭生活の中に、たった十分間も、たいていは持てないことになっているらしい。それは誰にとっても、どうやらそのように定まっているらしい。その得がての十分間を、どんなに嘆けば納得のいくように取り戻せるものか、途方に昏れて侘しくかなしく、天の一角を恨みたらしくみつめるおっさんの場に、わが山村順さんは正当に立ちどまったのではあるまいか。」
2013-01-18 Fri 22:56 | 古本
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