2014-04-11 Fri

編者は、あとがきで、「最初にどの文章に出会ったのがきっかけとなったのか、もはや憶い出せないが、これは蒐めると面白いぞ、と思いつき、」「それ以来、趣味の古本漁りのかたわら、その種の文章を見つけては入手し、長い間かかって、これらの珠玉の文章が徐々にたまっていった。」と書いています。
内田百�里痢峇�」というエッセイでは、「私は若い時非常に漱石先生を崇拝したので、先生の真似をした。」とあり、漱石の書斎にあった、「箆棒に大きな机」とそっくりな机を作らせたと書いています。
また、天野忠は、定年後初めて二畳半の書斎を持ったときの気持ちについて、「毎日この時の来るのを願ってばかりいたのだったのに、」「手も足の出ないほど何もすることがないらしいのである。」「ときどきその状態の阿呆らしさに笑えてくるときがある。」「虚しさの底のほうでニッと笑っているような腹の冷たい笑いである。これがひょっとしたら幸福という奴の別の顔であろうかと思う。」
と書いています。これは、彼の詩の世界そのものですね。
2014-04-11 Fri 20:35 | 新刊本
2014-04-10 Thu

編者は、リテラリーゴシックの最大の特性は「不穏」であるといっています。この本は、その観点から、黎明期から現在に至るまで、わが国における文学的ゴシック作品を集めた画期的な本といえます。
そこには、吉岡実の詩や、葛原妙子の短歌、高柳重信の俳句も入ってきます。意外なところでは、宮沢賢治の作品も、「無垢とは常に極悪な何かの傍らにあってこそ成立する」という考えから入れていますし、古井由吉の作品については、「そのレトリックの迷宮的な魔術性」から入れています。
2014-04-10 Thu 20:17 | 新刊本
2014-04-08 Tue

バッハからグールドまで、9人の作曲家、音楽家たちについて書かれたエッセイです。ご自分の音楽や演奏家たちの受容史を交えながら、核心的なことに触れています。例えばバッハについては、20世紀の大衆社会が到来するまで忘れられた存在だったのですが、それが変化したのは、バッハの音楽は、超時代的な、あるいは未来的な平等や対等や均衡や相互的なコミュニケーションの理想を、精緻な設計図=楽譜によって後世に残したからだと分析しています。また、モーツァルトについては、現代が起承転結や脈絡を失い、われわれが刹那的になればなるほどモーツァルトはリアリティを持って迫ってくるとし、20世紀に新たに発見しなおされた作曲家であるといいます。フルトヴェングラーについて、解像度の低い音のほうが、魅力的に聞こえる理由について、ドイツの森のような鬱蒼としたサウンドこそが、彼の求めていたサウンドだと思うと書いています。
2014-04-08 Tue 19:04 | 新刊本
2014-04-05 Sat

この本の冒頭で、B級のモットーが掲げられています。切り取ってトイレにでも貼っておいて欲しいと書かれていますので、そうしています(うそ)。
1 推薦盤などまっぴらごめんだ!
2 平穏無事な演奏なんて捨ててしまえ!
3 ドンジャカは生命のほとばしりだ!
4 暗くて死にそうな音楽が最高!
5 ばかばかしいほど明るい音楽は貴重だ!
6 むちゃくちゃな合奏大いに結構!
7 ギチギチの合奏にエクスタシー!
8 アリが這うように遅いテンポは大歓迎!
9 スピード違反もおとがめなし!
10 原典版て何?
11 本場ものは退屈で死んでしまう!
12 みんな、あたしの心の吐露を聴いてよ!
13 機械みたいな音楽だって悪くない!
14 セックス・アピール演奏家の妖しさ!
15 意味不明でどこが悪い!
16 正統的なものは二流だ!
17 知らないことは恥じゃない!
悪趣味はすばらしい。
2014-04-05 Sat 15:24 | 古本
2014-04-04 Fri

著者が、生前交流のあった花田清輝、中野重治、長谷川四郎、菅原克己、辻征夫について、書いたり話したことをまとめた本です。
捨て身であったということは言葉を変えれば、純粋だったということでしょう。
花田は、芸術は芸術運動のなかから生まれるとの信念に忠実でしたし、中野は、優秀な庶民の魂を信じていました。長谷川は、ただ単に生きてあること、すみずみまで全的に生きてあること、これだけが問題であるとし、幸福だとか不幸だとか苦しみだとかは、その構成分子なのであると語っていました。菅原は、人生は浅ましい勝ち抜き戦なんかではない、負けても負けても自分に正直であることにへこたれないと考えていました。そして、辻は、詩人でしかありえない運命に捨て身でした。人間がこの世に生きてあることのいわくいいがたい味わいを言葉を織ってさながらに掴みとる、それこそいのちがけの繊細な作業に対し勇敢でした。
2014-04-04 Fri 19:02 | 新刊本
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