Renkei日記 - 八十島法律事務所

2013-07-30 Tue

梶井基次郎 「檸檬」 (集英社文庫) 1991年5月25日刊


 これは集英社文庫ですが、これまで紹介した作品集のなかで、一番新しいものです。ですので、冒頭に、4ページにも亘り、写真を載せ、年譜もあり、なかなか充実しています。
 しかし、何より特筆すべきは、呉智英による、鑑賞という名の解説でしょう。
 彼は、梶井の「桜の樹の下には」、石川淳の「山桜」、坂口安吾の「桜の森の満開の下」も三つの作品を比較して、それぞれの作品を書いたときの作者の年齢に注目します。
 そして梶井と石川や坂口の作品の違いは、青年と壮年の間にある断層を超えていたかいないかにあるとします。
 この断層を越える時、感受性の鋭敏な者は、桜の花の背後にある死の匂いを感知する。
梶井はまさに、この断層を越えつつあった、越えようとしていたのであった。そこが、石川や、坂口との違いである。
 なるほどね。

2013-07-30 Tue 18:22 | 古本

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