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2014-01-07 Tue
アンナ・カヴァン 「氷」 (サンリオSF文庫) 1985年2月28日刊
これは、1967年死の1年前に書かれた、最後の長編です。ストーリーは、世界が氷河期に向かい人類滅亡の危機が迫る中、主人公が一人の少女を追っていくという話ですが、お話で読ませるというものではありません。
翻訳者のまとめにあるように、作者は、自身の個体としてのフィジカルな死と、存在論的な死をみつめるメタフィジカルな視線、そして、それらに対峙する(もしくはそれらを包摂した)氷=外世界の終末という三つの視点を持つ、神秘的な現実=幻想空間を提示しています。
主人公は、「私にとって、現実というものは常にその量を計り知ることのできない存在であった。」と呟きますが、これは作者そのものの独白でしょう。
「生命と無機質の結晶に屈服し、窓外にはただ、死の極寒が、氷河期の凍れる真空が広がっているばかりだ。時間と空間が飛ぶように過ぎ去っていく。ポケットの中の銃の重さが心強い安心感を与えてくれる。」ということで、この作品は終わっています。
2014-01-07 Tue 17:32 | 古本
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