Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-03-14 Wed

片岡義男 小西康陽 「僕らのヒットパレード」 (国書刊行会)


 「僕、外国の人が日本語で歌うレコードも集めてるんです。」、「いま僕は、いつまでかかるか分からないんですけど、キャピトルレコードのものをかたっぱしから買っています。」、「こういう誰も買わないものを買うのは楽しいですね。」といった発言からも分かるように、二人のマニアックさが十分に伝わる本です。
 また、こんななにげない文章も、もさすが小説家と思いました。
 「ブルーマイナー」の一節が銀座の街頭で僕に再認識させた強烈な多幸感は、半世紀前のアメリカのジャズミュージシャンたちの、自由を希求した孤独とつながっている。

2012-03-14 Wed 19:04 | 新刊本

2012-03-14 Wed

藤澤清造 「根津権現裏」  (新潮文庫)


 芥川賞作家の西村賢太がいなければ、まさに幻のままであった小説です。彼はこの小説によって人生を変えられたと言っています。さてこの小説のどこが凄いのでしょうか。
 西村いわく、登場時にすでに古めかしいとされていた独特の文体であるが、それに戯作者の精神を持ってきている点が、凡百のむやみと深刻に自己と向き合う行為を崇高とする自然主義作品とは大きく異なっていると言います。作者が随所に仕掛けているパロディカルなテクニックと全篇に通底するする戯作の精神を見逃してしまうならば、人生の悲惨事だけを執拗に記した陰鬱なだけの世界という従来の評価から永遠に解き放てぬと言っています。
 さすが小説家の分析だと思います。

2012-03-14 Wed 19:00 | 新刊本

2012-03-08 Thu

色川武大 「小さな部屋 明日泣く」  (講談社文芸文庫)


 色川という作家は実にふしぎな作家でした。書いたものもそうですが、その人自身も。その意味で、実に作家らしい作家と言えましょう。
 この作品集は、昭和31年に書かれた幻の処女作を含め、12の短編からなっています。いずれも、現実と幻想の間の揺れが絶妙に表現されています。

2012-03-08 Thu 18:22 | 新刊本

2012-03-08 Thu

高橋源一郎 「タカハシさんの生活と意見」 (東京書籍)


 タカハシさんは、「吾輩」という名の猫と哲学を語り、文学の没落を語る。
 作家は「描写」ができなくなった、「描写」に値するものがなくなってしまったと論じ、寺山修司は、国木田独歩のリメイクであると断じる。そして、国木田独歩は、風景描写を釣ったつもりで、実は近代文学そのものを釣ったと言います。
 さて、近代文学そのものとは何でしょう。答えは、「内面」でした。
 日本文学は「散歩」とともに発達し、都市を「散歩」することによって現代文学が生まれたのでした。今も「散歩」によって何か生み出されているのでしょうか。

2012-03-08 Thu 18:00 | 古本

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