Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-07-14 Sat

西脇順三郎 「旅人かへらず」  (東京出版) 昭和22年8月20日刊


 定価50円。吉岡実が、ゾッキ本として購入したという詩集です。
 はしがきの中で、西脇は、「自分の中にもう一人の人間がひそむ。通常の理知や情念では解釈の出来ない、割り切れない人間がゐる。これを自分は「幻影の人」と呼びまた永劫の旅人とも考える。この詩集はさうした「幻影の人」の立場から集めた生命の記録である。」と書いています。
      無限の過去の或時に始まり
      無限の未來の或時に終る
      人命の旅
      この世のあらゆる瞬間も
      永劫の時間の一部分
      草の實の一粒も
      永劫の時間の一部分
      有限の存在は無限の存在の一部分

2012-07-14 Sat 15:50 | 古本

2012-07-13 Fri

吉岡実 「死児」という絵 (思潮社)1980年7月1日刊 


 こちらが元本で、当時としては価額も高かったとありますが、2900円です。
 1955年からその当時まで折々に書いたエッセイのすべてを収録したとあり、装幀も著者自らしています。
 増補版では、意にみたない五篇を省いたとあります。どの辺が意にみたなかったのか気になるところです。吉田一穂の「羅甸薔薇」を神保町の露天市でゾッキ本として出ていたのを買ったというところでしょうか(またしてもゾッキ本)、あるいは私のもっとも気に入った作品は「故園の書」としながら、書斎のどこかに埋没していると書いているところでしょうか。また、金子光晴について、臆面もない女への執着だと書いているところでしょうか。

2012-07-13 Fri 18:00 | 古本

2012-07-13 Fri

吉岡実 「死児」という絵〔増補版〕 (筑摩叢書328)1988年9月25日刊 


 元本は、1980年に思潮社から出されています。この元本は、部数も少なく、当時としては値段も高かったことから、今回再刊されることになったとあります。
 内容は、エッセイということですが、自分の詩集についての話や、義父である和田芳恵のこと、加藤郁乎や飯島耕一との出会いについて書かれています。また中原中也の署名入りの「山羊の歌」を所有しているとか、西脇順三郎の東京出版刊の「旅人かへらず」と「あむばるわりあ」の2冊はゾッキ本を貰って、真に魔力ある詩に驚いたといっています。それにしても、ゾッキ本として出ていたことに驚きます。

2012-07-13 Fri 18:00 | 古本

2012-07-12 Thu

山口昌男 「本の神話」 (中公文庫)  昭和52年12月10日刊


 由良の「みみずく偏書記」でも取り上げられていた本です。この本は、モーツアルトの話から現代アフリカ論へ、蒐集の話からカバラ、ゲーテ、フロイトそしてボルヘス論に及ぶというものですが、解説を書いている大江健三郎によれば、ただの博識な雑学家の話の泉と思ったら大間違いということです。
 生活世界の中に隠された<知>を読みとること、ある旧弊な<知>の世界が黄昏に近づき、その旧弊な<知>の世界を墨守する神々たちの足下の大地が亀裂を生ずるとき、<その亀裂を通して立ち現れたもう一つの世界、もう一つの世界の相貌を組織すること>であり、これが著者の自称する<拾い屋>すなわち<プリコール>の仕事なのであるということだそうです。

2012-07-12 Thu 17:32 | 古本

2012-07-09 Mon

由良君美 「みみずく偏書記」 (ちくま文庫) 2012年5月10日刊


 元本は、1983年に青土社から出ています。書評や読書論などからなっています。
 柳田国男について、その発想源が実は外国にあったとし、「実に不思議なことに、日本で何らかのイデオロギー的立場に立つ人たちは、すべてと言うほど書誌学に弱い。こういう柳田の一側面に対しては、見込みも甘いし、評点もいい加減である。」と書き、郡虎彦については、「白樺派正統派の人たちについてのいわゆる人道主義的評価なるものについては、私はあまり点の甘い方ではない。白樺派に属しながら、そのいわば、ズッコケ組に入りそうな人たちの方に、どうしても、私の高い評価は傾いてゆく。」と書き、また「悪い所を知り抜かないで、どうして相手をまっとうに評価できようか。」として、ドイツ人よりも激しいナチ精神の体現者であったイギリスの謀略放送家について語っています。
 彼自身いろいろ言われることの多かった人のようですが、書いていることは無類に面白いと思いました。

2012-07-09 Mon 17:48 | 新刊本

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