2014-03-25 Tue
木山の、主として晩年に書かれたエッセイ集です。タイトルになっている角帯兵児帯という一文は、「帯を後に結んでおくと、ついそのまま寝てしまい、眼がさめた時、帯の結び目が背骨にストレスをおこして、神経痛がおこりがち」であるから、「日本の男はすべからく帯は前結びにするように」という新工夫はないものであろうかと嘆きます。また、隣近所では一軒のこらず泥棒にやられているのに、自分の家には入られたことがないことを嘆いて、「だから私は近頃では夜も昼も玄関に鍵をかけないで、焼酎の四合瓶を一本用意して、来たら一緒に飲もうと心ひそかに待ち受けているのであるが、それでも泥棒はなかなか入って来ないのである。」ととぼけたことを書いています。
この本の終わりに「敗戦直後満州で作った歌」が載せられています。その中の一首に
幼な児に自刃をしへし友とのむ真昼の酒の腹にしむかも
というのがあります。この友というのは、詩人の逸見猶吉のことです
2014-03-25 Tue 19:46 | 古本
2014-03-04 Tue
こんなことを書く人です。
「生きているということは、結局、感動をさがしていることじゃないか、と気がついたのも、ちょうど、五十面をさげたころである。ただ、そんなこと、いい年ォしてはずかしくって、いえなかった。それが、このごろ、そんなにもはずかしがらずに、いえるようになったのである。なったら、そのころから、感動することが少なくなった。なくなったといってもいい。」
「ことばを、いちばん、愛して、大切にするということは、じつはしゃべらないということかも知れない。」
2014-03-04 Tue 18:39 | 古本
2014-02-05 Wed
惜しくも2009年5月2日に亡くなった清志郎の作品です。内容は、一応双六問屋から来た男が、自由に語りつくすという体裁をとっています。
町田康は、解説で、次のように言っています。
「よく、筋道の通ったこと、などというが誰もが簡単に納得する筋道など嘘に決まっていて、しかし人は筋道がないと不安なのでなんとなくそういうものがあることにしようとしているが、どうです?この文章。まるで歌じゃないですか。歌が、音楽が文章という形を取ればこうした明らかな筋道がないにもかかわらず、人の心に響く形になると私はいっているのです。」
たとえばこんな具合です。
昔のことなら笑いながら話せる。だって本当に楽しいことばかりだったから。
未来のことなら笑いながら話せる。だって夢のようなことを実現できると思うから。
でも今の気持ちを聞かれたら、僕はつまらないことしか言えない。
腰の引けたイクジ無しどもがこの世の中を動かしているのさ。
名著だと思います。
2014-02-05 Wed 18:05 | 古本
2014-02-04 Tue
この小説は、連合赤軍事件をモデルにし、その関係者の家族が崩壊していくさまを描いたものです。
女の業というものを描いてきた円地には珍しい、社会的なテーマを扱ったものということができましょう。
作品の中で、主人公は次のようなことを言っています。
「食卓の団欒が一番幸福だなんて家は、今の日本では珍しいですよ。皆、外では口を拭っているけれども、幸福な家庭は一様に幸福であるが、不幸な家庭はさまざまに不幸であるというトルストイの名文句はもう19世紀的ですよ。極楽みたいな家庭なんて、現代にはありませんよ。」
と、きわめてクールなことを言わせているのですが、最後は、血のつながりに希望を持たせた終わり方にしています。
2014-02-04 Tue 17:30 | 古本
2014-02-04 Tue
ホフマンは、1776年に生まれ、46歳で亡くなっています。現在は幻想作家と言うことで評価も定まっていますが、生前は、裁判官をやりながら、売れない小説を書いていたということのようです。ちなみに、バレエの定番「くるみ割り人形」は、彼が書いた童話が原作になっているようです。
この短編集は、池内氏が自ら選んだ「クレスペル顧問官」「G町のジェスイット教会」「ファールンの鉱山」「砂男」「廃屋」「隅の窓」からなっており、翻訳もしています。
中でも「砂男」はもっとも有名な作品で、望遠鏡、鏡、自動人形といったものが重要な小道具として使われています。
2014-02-04 Tue 17:11 | 古本
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