Renkei日記 - 八十島法律事務所

2014-06-30 Mon

嵐山光三郎 「桃仙人」 (メタローグ) 1995年1月15日刊


 深沢七郎との20年に及ぶ交情を赤裸々に綴ったもので、深沢との出会いから、死までが書かれています。
 深沢は、故郷である山梨県石和の桃山を自慢にしていて、生前武田泰淳や井伏鱒二を案内して、桃林の中でギターを弾いたことが、記憶に深く染み付いていて、その話を嵐山に何度もしていました。そして、埼玉県菖蒲町でラブミー農場と称して自給自足の生活を送っていました。そんなところから、このタイトルにしたのでしょう。
 嵐山は、「深沢は、世間では、人間嫌いのヘンクツ者とみられ、また、そう思われても仕方がない言動をしてきた人ですが、そのじつ、心やさしく、淋しがり屋で、遊びに行った人が帰るのがいやで、泊まっていけ、泊まっていけとすすめました。」と書いています。
 こうしためんどくさい人は、また人をひきつける魅力も持っていたのでしょう。

2014-06-30 Mon 17:33 | 古本

2014-06-26 Thu

荒川洋治「ロマンのページにパーキング」(毎日新聞社) 1990年2月25日刊


これは、週刊誌や新聞に発表された書評やエッセイをまとめたものです。
 広津和郎全集を紹介した中で、広津のある短編について、短い文章に中に「私」や「父」が多数出てくることを指摘し、「つまり、いまの感覚からすると整理が必要な文章ということになろう。」「でもぼくは、だからいいのだと思う。」「たしかに主語の省略というのは文章の近代化に欠くことのできないものだけれど、それは、近代的文章(小説)が、日記になって自分の問題ばかり書こうとしているからだ。」「日記を書くのに、『私は』『私は』っていちいちやらないのだ。」「広津和郎はどこに立っても文章の見晴らしがよい。私小説とはいいながら、結局、今日の『私』よりも開かれているのではないか。」「どちらが近代人の小説なのか、考えてみるべきだとぼくは思ってしまう。」
 こうしたところが、荒川節ですね。

2014-06-26 Thu 17:40 | 古本

2014-06-26 Thu

荒川洋治「倫理社会は夢の色」 (思潮社) 1984年11月30日刊


 この詩集には、荒川自身が書いた栞が挟まれています。そこには、「倫理社会にはまだ見処がある、というのがこの本のメインテーマである。」「いまは『倫理』を破りやすい時代である。破ることが真の破壊力を持たない。」とし、この詩集は、「恋愛ヒロバ面においてはA→B→Cの古典的ステップを折り目正しく慎重につきすすむさまざまな男と女の、くるしい、しかれども本質的命題をはらむその『性愛』をマークした。」と書いています。
    「倫理社会は夢の色」から
  倫理社会は夢の色   だが
  誰もそこには棲まない
  六甲は手の甲
 (自然)とさえ見まがうほどの(決定)の火柱
  こうしてぼくはこの二年 夜が
  明ければ

2014-06-26 Thu 17:27 | 古本

2014-06-24 Tue

瀬沼孝彰 「凍えた耳」 (ふらんす堂) 1996年6月22日刊


 八木幹夫は、この本の帯で、「人は光に中でのみ生きる訳ではない。闇が精神の深い安堵をもたらすことを忘れてはならないだろう。」と書いています。まさにこの詩集の世界を言い表しています。
   「マネー」から
 やはり地の果て サラリーマン金融
 自業自得で くるところまできてしまったと思う
 明るい店内は清掃がいきとどき
 受付の女子事務員の口調も丁寧だ
 彼女は差別用語など決して口にしない
 微笑みながら安心してカードを作って下さいと言う
 マネーがこんなに恥ずかしいものであるとは
 苦しいものであるとはね

2014-06-24 Tue 18:40 | 古本

2014-06-24 Tue

大槻鉄男 「樹木幻想」 (編集工房ノア) 1980年4月10日刊


 大槻は、1930年4月に京都で生まれ、大学の教員をしていましたが、1979年1月に、48歳で亡くなっています。
 彼は、同人誌「VIKING」の同人であり、この本は、生前親交のあった山田稔らによって編集されたものです。
   詩集「爪長のかうもり」から「骨」
 火葬場から出た骨には目方がない
 目方のない この白い骨の群れ
 ひとびとの目は失はれた目方のために重い
 だがこの骨には目方がない
 中世石像のやうな
 かたく冷たい頬を黒い衣にのぞかせて
 この沈黙を聞く あなたは誰か
 この沈黙が聞くものは何か 

2014-06-24 Tue 18:30 | 古本

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