Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-07-13 Fri

吉岡実 「死児」という絵〔増補版〕 (筑摩叢書328)1988年9月25日刊 


 元本は、1980年に思潮社から出されています。この元本は、部数も少なく、当時としては値段も高かったことから、今回再刊されることになったとあります。
 内容は、エッセイということですが、自分の詩集についての話や、義父である和田芳恵のこと、加藤郁乎や飯島耕一との出会いについて書かれています。また中原中也の署名入りの「山羊の歌」を所有しているとか、西脇順三郎の東京出版刊の「旅人かへらず」と「あむばるわりあ」の2冊はゾッキ本を貰って、真に魔力ある詩に驚いたといっています。それにしても、ゾッキ本として出ていたことに驚きます。

2012-07-13 Fri 18:00 | 古本

2012-07-12 Thu

山口昌男 「本の神話」 (中公文庫)  昭和52年12月10日刊


 由良の「みみずく偏書記」でも取り上げられていた本です。この本は、モーツアルトの話から現代アフリカ論へ、蒐集の話からカバラ、ゲーテ、フロイトそしてボルヘス論に及ぶというものですが、解説を書いている大江健三郎によれば、ただの博識な雑学家の話の泉と思ったら大間違いということです。
 生活世界の中に隠された<知>を読みとること、ある旧弊な<知>の世界が黄昏に近づき、その旧弊な<知>の世界を墨守する神々たちの足下の大地が亀裂を生ずるとき、<その亀裂を通して立ち現れたもう一つの世界、もう一つの世界の相貌を組織すること>であり、これが著者の自称する<拾い屋>すなわち<プリコール>の仕事なのであるということだそうです。

2012-07-12 Thu 17:32 | 古本

2012-07-09 Mon

由良君美 「みみずく偏書記」 (ちくま文庫) 2012年5月10日刊


 元本は、1983年に青土社から出ています。書評や読書論などからなっています。
 柳田国男について、その発想源が実は外国にあったとし、「実に不思議なことに、日本で何らかのイデオロギー的立場に立つ人たちは、すべてと言うほど書誌学に弱い。こういう柳田の一側面に対しては、見込みも甘いし、評点もいい加減である。」と書き、郡虎彦については、「白樺派正統派の人たちについてのいわゆる人道主義的評価なるものについては、私はあまり点の甘い方ではない。白樺派に属しながら、そのいわば、ズッコケ組に入りそうな人たちの方に、どうしても、私の高い評価は傾いてゆく。」と書き、また「悪い所を知り抜かないで、どうして相手をまっとうに評価できようか。」として、ドイツ人よりも激しいナチ精神の体現者であったイギリスの謀略放送家について語っています。
 彼自身いろいろ言われることの多かった人のようですが、書いていることは無類に面白いと思いました。

2012-07-09 Mon 17:48 | 新刊本

2012-07-02 Mon

丸谷才一 「快楽としての読書(日本篇)」 (ちくま文庫) 2012年4月10日刊


 本書は、1964年から2001年までに書かれた約600篇もの書評のうち123篇が収録されています。著者は、著名な作家ですが、書評について一家言持っています。いわく「書評は読書案内として役立つこと、そのためには信頼されなければならない。そして信頼されるというのは、書評の書き方の感じだと思ふ。」とあります。そして、戦後イギリスから雑誌が入るようになって、最も感銘を受けたのは、書評欄の充実ぶりであった、戦前の日本にも書評はあったが、紹介の面は具体性が乏しく、批評の面は構えが単純で、対象である本が迫ってこなかったといっています。そして、扇谷正造が1951年に週刊朝日の編集長になり、週刊図書館という書評欄を始めたのが、日本における本格的な書評の嚆矢であったと言っています。
 この本は、著者のアイウエオ順となっていますが、できれば出版順にして欲しかったと思いました。
 

2012-07-02 Mon 18:33 | 新刊本

2012-06-28 Thu

安東次男詩集  (書肆ユリイカ) 1957年8月30日刊


 この詩集は、「今日の詩人双書」の1冊で、彼の4つの詩集と俳句から、飯島耕一が編集したもので、長い解説も書いています。安東について、飯島は、「暗黒に敏感であり、近代日本の持つ諸矛盾に圧迫を感じないではいられない詩人であった。しかし、彼は、人間の、本質的な明るさ、楽天主義的なほどの明るさを知らずにすましておくことはできない。」と述べています。
            「ぼくの名まえは」から
        すべてはもとのままであるのに
        どこかが永久にくるってしまった
        なにものにも似ない  あなたよ
        ぼくはあなたにはなしかける
              (略)
        世界よ  残忍な灰色の雨期よ
        こんこんと眠る女
        小鳥を秘めて(小鳥はとぶだろうか?・・・・・・)
        小鳥がとびたつとき ふっとぶ世界
        そのときのまぶしそうな太陽を逃すな!

2012-06-28 Thu 17:15 | 古本

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