Renkei日記 - 八十島法律事務所

2012-09-21 Fri

朝山実「アフター・ザ・レッド」 (角川書店) 平成24年2月15日刊


 副題が「連合赤軍兵士たちの40年」となっているように、「連合赤軍事件」に関わった人たちの、「その後をどう生きてきたのか」を聴こうとしたものです。
 当たり前といえば当たり前ですが、皆さん、淡々と現実を生きています。ではありますが、そこに屈託がないわけではないと思います。そこがほんの少し垣間見られるところが、読みどころでしょう。それは例えば、こんな言葉に出ています。
 「正しいと思ったからやったんです、あのときは。ただ、正しいかどうかの判断に、迷いがあった。それが真実に近いと思うんですが。僕が革命闘争をやろうとしたことは間違ってはいなかった。それはいまもそう思っています。」、「当時僕らには、そんなに追い詰められたという気持ちはぜんぜんなかった。あれは森さんにとっての一つの挑戦だったと思うんです。新しい闘いを切り開くための。」、「実は、死ぬ覚悟というのは、そんなに難しくない。だけど殺すというのは決意をしても、なかなかできるものではない。しかし、(森は)それをやり切らないといけないと考えたのではないか。」

2012-09-21 Fri 17:38 | 新刊本

2012-09-06 Thu

森達也 「ぼくの歌・みんなの歌」 (講談社文庫) 2012年8月10日刊


 歌を通じて、自分や友人を語り、あるいはその曲を作ったミュージシャンを語るという本で、一気に読まされました。有名な曲なのに、何を歌っていたのか知らなかったものが多くありました。例えば、72年にヒットしたアルバート・ハモンドの「カリフォルニアの青い空」は、原題は「南カリフォルニアには雨が降らない」で、アメリカには来たものの、仕事にあぶれ、物乞いのようなことまでしたという原体験を反映したもので、曲調と異なり、明るい詩ではありません。また、スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・USA」は、アメリカの愛国心発揚ソングではなく、アメリカの酷薄さを歌ったものです。
どうも、「ほとんどのアメリカ人は、歌詞なんかまともに聴かない」ようで、英語の分からない日本人と同じレベルです。安心しますね。
 ボブ・ディランのわかりにくさについて語りながら、「程度の差はあるけれど、僕らはみんな転校生だ。この場所からあの場所へ。この人からあの人へ。こうして月日は過ぎる。僕自身も、偽装を捨てる日はまだ先のようだ。もしかしたらこの偽装の中にしか真実はないかもしれない。」と書いていますが、なるほどです。

2012-09-06 Thu 17:20 | 新刊本

2012-08-31 Fri

坪内祐三編「禁酒宣言上林暁酒場小説集」(ちくま文庫)1999年9月22日刊


 これも上林フリークによるアンソロジーで、タイトルから分かるように、酒にまつわる作品から選んでいます。
 選者は、大学院を出た20代の終わりころ、小林信彦が、かつて筑摩書房の全集を読破したことがあると何かで書いていたのを読み、小林氏ほどの読書巧者が全集を読破してしまうとは、かなり面白いのに違いないと思い、チャレンジしてみてはまったと書いています。
 この本は、選者の解説とともに、日本文学者のスタンレー鈴木の評論が載っています。そこで彼は、「ジェイムズ・ジョイスが何百頁も費やして描こうとした神話なき現代の神話世界を、上林は、わずか数十頁で描き尽くしている。」と書いています。
 選者が書いているように、貧乏くさくても「ミニマルな世界こそが、日本人が、日本人に特有の、ある、深遠で永遠なるものに近づける道」なのかもしれません。

2012-08-31 Fri 18:29 | 古本

2012-08-31 Fri

山本善行撰「上林暁傑作随筆集故郷の本棚」(夏葉社)2012年7月30日刊


同じ選者による上林暁のアンソロジー第2弾で、今回は随筆から選んでいます。選者は、「上林は何冊も随筆集を出していますが、この本がこれら珠玉の随筆集の中にあっても色あせないで、長く読み継がれていくなら、選者としてこんなうれしいことはない。実際そのように夢見ながら、作品を選んでいったのだった。」と書いています。
 上林は、戦争前も、戦争中も、戦争後も、古本屋歩きは、私の最大の道楽だったと書いていますが、古本についての話しや、知人の作家の話など、どれもおもしろい内容となっています。
 選者が上林の文学にのめり込むきっかけとなったのは、「武蔵野」(現代教養文庫)を読んだことだったと書いています。いつだったかちらっと見てるんですが、そのときはなぜか買いませんでした。失敗でしたね。

2012-08-31 Fri 18:25 | 新刊本

2012-08-31 Fri

山本善行撰「上林暁傑作小説集星を撒いた街」(夏葉社)2011年6月25日刊


一人の小説家のアンソロジーですが、選者がどういう視点で作品を選んだのかが最大の見所でしょう。選者は、「身体の中には上林暁が入っているので、少し大げさに言うと、上林の作品なら何を読んでも、どの小説を読んでも楽しめてしまう。」と書いています。多くの作品の中から、7つを選び出すことは、苦しくもかつ楽しい作業であったことが想像されます。
 さて選んだ理由ですが、最初の「花の精」は、最も好きな小説のひとつとあります。上林には、病妻物と呼ばれている作品群がありますが、そこからは最小限に抑えたということで、二つの作品を取り上げています。井伏鱒二は、二度目に倒れてからのものが一段といいとどこかで書いていて、選者も全面的に賛同し、その時期のものから一篇選んでいますが、初期のころの若々しい抒情的な作品も捨てがたい魅力があるとして、昭和6年に書かれた、この本のタイトルにもなっている「星を撒いた街」を選んでいます。

2012-08-31 Fri 18:21 | 新刊本

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