Renkei日記 - 八十島法律事務所

2013-03-18 Mon

山本善行「定本古本泣き笑い日記」 (みずのわ出版)2012年12月25日刊


 青弓舎から2002年9月22日に出た「古本泣き笑い日記」にその後に書かれたものを加えて定本としたものです。
 著者は現在は善行堂という屋号で、古本屋をやっていますが、当時は学習塾をやっていて、仕事の合間を縫って毎日のように古本屋巡りをし、その戦果が書かれています。
 それにしても、本当かと思われるような値段で購入しています。例えば、
 小山清の旺文社文庫の「落穂拾い・雪の宿」50円(私はこれを1500円で購入しています。)、上林暁の現代教養文庫の「武蔵野」も50円(1000円)、同じく上林暁の桃蹊書房の「悲歌」が函ありで100円(私は、函なしで3500円)、光文社の伊藤整詩集が署名ありで300円(私も署名はありますが6000円)、日本評論社の幸田露伴の「幻談」を2冊500円のうちの1冊として購入(値段は忘れましたが、そんなに安くはなかったかと)
 泣きながら読み終えました。

2013-03-18 Mon 21:45 | 新刊本

2013-03-08 Fri

清水昶 「詩は望郷する」 (小沢書店) 昭和60年8月20日刊


現代において詩を作るとはどういうことかとか、石原吉郎や辻征夫、北村太郎、黒田喜夫といった詩人たちについて書かれたエッセイ、評論集です。
 なかで、詩人天野忠と作家三島由紀夫を対比して、次のように分析しています。
 人間皆平等という発想はニヒリズムなのである。自分と他人との間を区別する個人性を喪失させてしまうからだ。天野忠は、そういう世界こそが人間を支えるものであり人間ひとりひとりが意味を持って生きているとかんがえること自体、傲慢すぎると思っている。
 逆に三島由紀夫は人間ひとりひとりに意味があるからこそ、自分の個人性を中心にしても世界は動かせるとかんがえていた。
 しかし現実には生理としての老いがあり死がある。三島は命という自然に絶望したのだ。
 天野忠も、同じく絶望している。両者はただ生の見方がみごとに正反対なのである。
 また石川啄木についてはこんなことを言っています。
 現在啄木について語ることは憂鬱である。とくに「時代閉塞の現状」について語ることは。何回も読みなおしたけれど、読みなおす度に、何だ、これは、いまの時代と同じではないかといったしらじらしい思いに駈られるからである。

2013-03-08 Fri 21:26 | 古本

2013-03-04 Mon

辻征夫 「詩の話をしよう」 (ミッドナイト・プレス) 2003年12月18日刊


 辻は、2000年1月14日に、60歳で亡くなりましたが、この本は、1998年9月17日から、1999年10月6日まで、5回に亘る詩人の山本かずことの対談をまとめたものです。
 中で、自分の内面を、水を入れた透明なビニール袋にたとえる話や、詩で大切なことのひとつは、厳密さということであり、曖昧なのは詩ではないと言い切るなど、興味深い話が出てきます。
           宿題
 すぐにしなければいけなかったのに
 あそびほうけてときだけがこんなにたってしまった
 いまならたやすくできてあしたのあさには
 はいできましたとさしだすことができるのに
 せんせいはせんねんとしおいてなくなってしまわれて
 もうわたくしのしゅくだいをみてはくださらない 
 わかいひに ただいちど 
 あそんでいるわたくしのあたまにてをおいて 
 げんきがいいなとほほえんでくださったばっかりに
 わたくしはいっしょうゆめのようにすごしてしまった

2013-03-04 Mon 21:20 | 古本

2013-02-28 Thu

早川義夫 「たましいの場所」 (ちくま文庫) 2012年12月10日刊


 元本は、2002年7月に晶文社から発行されています。文庫化にあたり、一章分増えています。
 父や母の死、その後の相続をめぐる兄弟間の争いについて書いている中で、こんなことを言っています。
 「言葉は、喋れる人のためにあるのではなく、もしかしたら、喋れない人のためにあるのではないだろうか。自分の都合のいいように、『自分の意見』を言うためにあるのではなく、『正しいこと』、『本当のこと』を探すために、言葉はあるのではないだろうか。」
 詩的な文章だと思います。

2013-02-28 Thu 21:40 | 新刊本

2013-02-26 Tue

寺島靖国 「JAZZ偏愛主義」 (DU文庫) 2013年2月1日刊


 「JAZZ雑文集」に続くDU文庫からの第二弾です。
 前半はジャズの鑑賞法、後半は、これからも続くいい曲探しの旅という副題がつけられています。
 私自身は、この人の好みとは若干違っていて、この人が勧めるものは、避ける傾向があるのですが、文章は好きです。例えばこんなところ。
 「ジャズの楽しみの本質とは何か。さあ言うぞ。こういう誰も知らないディスクを夜中の二時ころ、『ヒッ、ヒッ、ヒッ』と笑いながら一人静かにライブラリーから取り出しトレイに収め、この盤の聴きどころは5曲目の<ノー・ベース>にあるのだぞよ、知らないだろう、知っているのは全世界で俺を含めて三人ぐらいだろうなあ、とホクソ笑んで一人悦に入る。それがジャズの楽しみの極限的本質というものなのだ。」
 まったくそのとおりなのです。

2013-02-26 Tue 21:31 | 新刊本

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